面白ストーリーの裏に隠された王道法則『ヒーローズジャーニー』と『神話の法則』
こんにちは。
yuu(@yu_yu211)です。
みなさん映画はよく見ますか?
最近では月額1,000円程度で見れるサブスクリプションサービスが浸透してきて、映画がより身近な存在になっていますよね。
泣ける映画、ハラハラドキドキする映画、ドキュメンタリー映画。
映画にはさまざまなジャンルが存在し、それぞれにオリジナルなストーリーがあります。
映画や小説、漫画やアニメも「ヒットの法則」があって、その法則に則って物語が描かれていたとしたら?
気になりませんか?
見ていて全然違う展開のように感じるそれぞれの作品の裏にも実は、共通するシナリオの法則が存在しています。
そんな法則を知れたら、映画がもっと楽しめるようになると思いませんか?
今回は、「ヒットの法則」として有名な「神話の法則」とその元になった「ヒーローズジャーニー」について詳しくご紹介していきます。
神話に隠された法則「ヒーローズジャーニー」
「神話の法則」について知る前に、その元になった「ヒーローズジャーニー」についてご紹介していきます。
「ヒーローズジャーニー」はアメリカの神話学者である「ジョーゼフ・キャンベル」が自身の著作「千の顔を持つ英雄」という書籍の中で発表した、各国の神話の英雄譚に共通する法則です。
世界各国の神話研究をしていた「ジョーゼフ・キャンベル」は、それぞれの神話の話の流れにある一定の法則があることに気づき、その共通項をまとめたものを「ヒーローズジャーニー(英雄の旅)」と名づけました。
この定義は、ジョージ・ルーカスやスティーブン・スピルバーグといった著名な映画監督に愛され、さまざまな映画のストーリー展開の王道法則として用いられました。
「ヒーローズジャーニー」8つの王道展開
ヒーローズジャーニーでは、以下の8つの展開が神話上の英雄譚の王道展開であると説明されています。
ヒーローズジャーニー8つの流れ
- Calling(天命)
- Commitment(旅の始まり)
- Threshold(境界線)
- Guardians(メンター)
- Demon(悪魔)
- Transformation(変容)
- Complete the task(課題完了)
- Return home(故郷へ帰る)
スターウォーズやマトリックスなどの超有名作品もこの展開にぴったり当てはまっていきます。
神話というのは、遥か昔から人々によって語り継がれてきた神様の物語ですよね。
当然、話の中に語り継がれるだけの魅力がなければ現世に神話として残らないわけです。
この「ヒーローズジャーニー」の法則を昇華させて提唱されたのが、次に紹介していく「クリストファー・ボグラー」が出版した「神話の法則」の中で語られている12の段階です。
ヒット作を生み出すための「神話の法則」とは
「神話の法則」とは、クリストファー・ボグラーが発刊した書籍です。
ただ映画を楽しんでいるだけでは、「神話の法則」という言葉も、クリストファー・ボグラーという人物も聞いたことはないはず。
クリストファー・ボグラーが記した「神話の法則」は「ヒーローズジャーニー」が元になっているんですが、「ヒーローズジャーニー」について知る前に、「クリストファー・ボグラー」と「神話の法則」について少しお話をしておきます。
クリストファー・ボグラーとは?
ハリウッドでストーリー開発の第一人者として注目された人物です。
ボグラーの著書「物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術」の中では、下記のように紹介されています。
ハリウッドでストーリー開発の第一人者として注目されるストーリー開発コンサルタント。ストーリー開発に携わった映画は、ディズニーの「美女と野獣」「ライオン・キング」の他、「ベオウルフ」「スパイダーウィックの謎」「アイ・アム・レジェンド」「ハンコック」「紀元前1万年」「いとしい人」「レスラー」など多数。ハリウッドの大手映画会社や脚本に取り組むライターへの助言をおこない、フォーチュン500社の企業のほか世界中で、神話の構造についてのワークショップもおこなっている 。
ストーリー開発コンサルタントという肩書きはなんとも怪しい聞こえ方ですが、数々の有名ハリウッド作品に携わってきた方なんですね。
「神話の法則」とは
さて、そんなクリストファー・ボグラーが記した著書「神話の法則」ですが、
簡単に内容を説明すると、世の中にある神話や物語のストーリー展開について共通項をまとめて導き出した法則について解説している書籍です。
「神話の法則」では「ヒーローズジャーニー」で登場した8つのストーリー展開をさらに昇華させ、12の段階に分けています。
また、「神話の法則」の中では、ユングが提唱した心理学的理論も用いながら、法則について語られています。
既存の考え方を元に、「クリストファー・ボグラー」がストーリーライター向けにテクニックや応用の仕方をまとめて昇華させましたって感じの本ですね。
「神話の法則」は現在絶版となっておりますが、これから紹介する12の段階などについては、後に出版された「物語の法則」でも説明されています。
では次から、「神話の法則」においての12の段階について深掘りしていきます。
「ヒーローズジャーニー」を昇華させた「神話の法則」12の段階
それでは、ホグラーが「ヒーローズジャーニー」をベースに昇華させたシナリオの法則12の段階について紹介していきます。
神話の法則で説明されているシナリオの12段階は以下のようになります。
「神話の法則」12の段階
- 日常生活
- 冒険への誘い
- 冒険の拒否
- 賢者との出会い
- 戸口の通過
- 試練、仲間、敵
- もっとも危険な場所への接近
- 最大の試練
- 報酬
- 帰路
- 復活
- 宝を持っての帰還
作品によって12の段階の順番が入れ替わっていたりしますが、この12の段階の基本形に当てはまる映画が数多く存在しています。
では12の段階それぞれについて少し解説します。
それぞれのパートの定義と具体例を「ハリーポッターと賢者の石」を例に紹介していきます。
日常生活
物語は主人公の日常生活から描かれ始めます。
何気ない日常やどこか頼りない主人公を映す場面から始まる映画も多いですよね。
主人公はどんな人なのか、どういう世界観の中で進んでいく話なのかを印象付けるためのパートになります。
主人公ハリーは亡き親の兄弟であるダーズリー家で暮らす少年。ダーズリー夫妻の実の子ではないハリーは贅沢を許されない厳しい扱いを受けていた。
冒険への誘い
冒険に発展する動機や理由付けが描かれ始めます。
主人公の日常の中で事件が発生したり、変化のきっかけとなる登場人物が現れたり、主人公が物語の中心人物として巻き込まれ始めるパートですね。
主人公が自ら進んで冒険や事件に巻き込まれるというよりは、周りの環境によって行動せずを得ないという状況が描かれることが多いです。
ある日、ハリーのもとに一通の手紙が届く。
それは、亡き父と母が通っていたホグワーツ魔法学校への入校を案内する手紙だった。
冒険の拒否
主人公は冒険や事件に関わることを1度は拒否します。
拒否というと極端ですが、主人公の不安や恐れ、現実を受け入れられないといった感情や状況を描いたシーンですね。
ハリーはホグワーツ魔法学校への入校に心を踊らせるが、ダーズリー夫妻はそれをよく思わなかった。手紙がハリーのもとへ届かないようにポストを塞いだりして、ハリーのホグワーツ行きを阻止しようとする。
賢者との出会い
主人公は賢者(メンター)と出会います。
主人公い試練を与え、知恵を与え、勇気を与える存在です。
悩み苦しむ主人公を引っ張ってくれるような存在の登場です。
ホグワーツ魔法学校へ行かせまいとダーズリー家の邪魔を受けるハリーの元に、謎の大男ハグリッドが現れる。
ハグリッドはハリーをダーズリー家から連れ出し、ホグワーツ魔法学校へ入学するための準備を手伝う。
戸口の通過
主人公がついに冒険へと向かっていくパートです。
戸口とは出入り口ということですね。
日常的な世界からついに本格的な冒険の世界へと足を踏み入れていくシーンが描かれます。
ここから物語の中で本格的にストーリー展開が始まります。
ハグリッドに手伝ってもらい、ホグワーツ魔法学校入学のために必要なものを揃えたハリーは、ついに魔法の世界への第一歩を踏み出す。
ホグワーツ特急が待つ9と3/4番線の出入り口となる駅の壁に、ハリーは突っ込んでいく。
試練、仲間、敵
冒険の世界へ足を踏み入れた主人公がさまざまな試練や敵と対峙していくパートです。
この過程で、共に試練を乗り越えたり敵と戦う仲間と出会いながら、成長を遂げていきます。
ホグワーツ特急の中で親しくなったロン、ハーマイオニーとともに、ハリーのホグワーツ魔法学校での生活が始まった。
ハリーのことを気に入らない同級生のマルフォイに邪魔をされたり、なぜかハリーには優しくないスネイプ先生の厳しい指導を受けながら、ハリーは魔法を学び始める。
もっとも危険な場所への接近
主人公は冒険の中で初めて危険な場所・場面に直面していきます。
ボスキャラ的な存在の登場や大きな事件の発生を匂わせるようなパートです。
クライマックスへ向けたストーリーが動き出します。
クィディッチの選手に選抜されたハリーは練習後、立ち入り禁止とされている3階に足を踏み入れてしまう。
先生に見つかることを恐れて逃げ込んだ部屋には、鎖で繋がれた三頭犬が…
そしてその足元には謎の扉が…
最大の試練
主人公に今までにない試練が降りかかります。
ハラハラドキドキ危険なシーンですね。
まだ未熟者の主人公に最大級のピンチが襲い掛かります。
ある夜ホグワーツ魔法学校の校内にトロールが侵入する。
女子トイレで泣いていたハーマイオニーにトロールが襲いかかるが、ハリーとロンはハーマイオニーを守るため立ち向かい、勝利する。
スネイプ先生が怪しいと睨んだハリーたちはクィディッチの試合中、スネイプを監視する。
どうやらスネイプがハリーを陥れるために魔法で邪魔をしているようだった。
報酬
ピンチを脱した主人公の元に、報酬が舞い込みます。
戦いに勝つとか、金品を受け取るといったことだけではなく、負けた場合でも、結果として何かの教訓を得る場合もあります。
ピンチを乗り越えた結果、安堵したり仲間と喜びあったりというシーンが描かれます。
また、再び危険が迫る可能性があることを匂わせたりするシーンでもあります。
スネイプの邪魔を阻止し、ハリーの手によってクィディッチの試合はグリフィンドールの優勝で幕を閉じた。
グリフィンドールの寮生は歓喜に沸いた。
そしてハリーたちはスネイプが何をしようとしているのかを探り始める。
帰路
ここで再び、主人公は日常の世界へと戻っていきます。
日常のようなシーンや主人公の安堵した落ち着いた描写が映し出されます。
ただし、危険が完全に排除されたわけではありません。
まだ敵がしつこく迫ってきたり、新たな危険が迫る雰囲気が映されたりもするパートです。
クリスマスを迎え休みをもらったハリーたち。
ハーマイオニーは実家へ戻り、帰る場所のないハリーはロンと一緒にチェスを楽しんでいた。
そんなハリーのもとにクリスマスプレゼントとして透明マントが届く。
ハリーは透明マントを駆使して謎に迫って行く。
復活
ここでクライマックスを迎えます。
主人公は再び危険に晒されながら、試練に向かい合っていきます。
目が離せない怒涛の展開が描かれるパートですね。
森の中でヴォルデモートと対峙したハリーは、ヴォルデモートが復活するために賢者の石を手に入れようとしていることを知る。
ハリーたちは先に賢者の石を手に入れようと、三頭犬が守っていた扉の先を目指す。
ロンとハーマイオニーの協力を得て、魔法使いのチェスを突破したハリーはその先で黒幕だったクィレルとヴォルデモートと対峙する。
宝を持っての帰還
試練に打ち勝った主人公は、元の世界・日常を取り戻します。
物語の本当のクライマックスです。
冒険を通じて得た経験や、仲間、宝物などを携えて主人公はようやく危険の取り除かれた日常を取り戻します。
作品によってはハッピーエンドとは限りません。
試練を乗り越えた先に、哀しい結末が待っている場合もあります。
ヴォルデモート復活の危機から皆を救ったハリーたちの、ホグワーツ魔法学校での1年が終わった。
ハリーたちの活躍があって、グリフィンドールは1年間での最優秀寮に表彰され歓喜に沸いた。
こうしてホグワーツ魔法学校1年目のハリーの冒険は幕を閉じ、それぞれの家族が待つ故郷へと帰っていく。
「神話の法則」の3つの構成
「神話の法則」の12段階は、3つの構成要素に分けて考えられています。
それが物語の3幕構成です。
具体的には以下のようになります。
ストーリーの3幕構成
神話の法則3幕構成の流れ
主人公の日常と決断(日常世界から非日常世界へ)
↓
主人公に迫る危険と行動(非日常世界での試練と報酬)
↓
主人公が危険を乗り越えた結果(非日常世界から日常世界へ)
「神話の法則」では、このように3つの構成に分けてストーリーが組み立てられています。
では「神話の法則」の12の段階がどのように3つに分けられるのか見ていきます。
第一幕|主人公の日常と決断
第一幕は日常世界を描き、非日常世界への導入までを描くパートです。
12の段階の中で、以下が第一幕にあたります。
神話の法則第一幕
日常生活
↓
冒険への誘い
↓
冒険の拒否
↓
賢者との出会い
↓
戸口の通過
第二幕|主人公に迫る危険と行動
第二幕は、非日常世界で主人公が危険に晒され、立ち向かっていくパートです。
12の段階の中で、以下が第二幕にあたります。
神話の法則第二幕
試練、仲間、敵
↓
もっとも危険な場所への接近
↓
最大の試練
↓
報酬
第三幕|主人公が危険を乗り越えた結果
第三幕は、非日常世界で危険に打ち勝った主人公が日常を取り戻していくパートです。
12の段階の中で、以下が第三幕にあたります。
神話の法則第三幕
帰路
↓
復活
↓
宝を持っての帰還
日常→非日常→日常
これが3幕構成の基本となります。
第一幕では物語の導入と主人公の立場や状況、これから起こることに対する導入部分が描かれ、第二幕で事件や障害が発生、第三幕で大きな事件が起こり、解決そして日常へ。
といった流れのイメージになります。
さいごに
ジョーゼフ・キャンベルが提唱したヒーローズジャーニーを昇華させた、クリストファー・ホグラーの「神話の法則」を知ることで、映画シナリオを分かりやすく解釈して、もっと映画を楽しむことができます。
このブログで紹介していく映画作品についても、「神話の法則」の観点からストーリーを考えて感想を紹介していくので、楽しく読んでいただけたら嬉しいです。